第二章 異世界と絵画

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「その帰る方法って……何?」  レミリは説明書を取り出して読んだ。 「それはもちろん、異世界に来るときに使った同じ絵画に触れ……あ!」 「ねえ、考えたくないんだけど、その絵画ってどれ? どこにあるの?」  瑠湖(るこ)はまだ話についていけないようで、理解した餡子(あんこ)とレミリは顔が引きつっていた。  甘利(あまり)はとりあえず瑠湖(るこ)に説明することにした。 「簡単に言うと、元の世界に戻れなくなってしまったんです。この場所に導いたはずの絵画はどこにもなく、それがなければ私たちはここから一歩も出られないのです」 「そ、そんなぁ!」  状況が飲み込めた瑠湖(るこ)は悲壮な顔をした。  そんなに落ち込まないで、どうにかするから。と甘利(あまり)が言おうとしたとき、瑠湖(るこ)から思っていたのとは少し違う言葉が漏れた。 「それじゃあお菓子もパンも食べられない……てことなのかなぁ?」  甘利(あまり)は少しばかり瑠湖(るこ)の気楽な考え方に安堵した。  そこで甘利(あまり)は考える。 「ではまず、絵画がどこにきえたの……か?」  言葉がとまった甘利(あまり)を3人は見た。 「どうしたの?」 「ちょっと、何か分かったの!?」 「え? そうですの?」  甘利(あまり)は一息置いて、ゆっくり頷いた。  そもそも今回のことは事件でもなんでもない。トリックというには少々言葉が過ぎるただ偶然の出来事でしかなかった。 「犯人はメイドさんです」 「メイドってあの、さっきぶつかった?」  餡子(あんこ)はその答えを聞いていぶかしんだ。  レミリも問いかけてくる。 「どうしてメイドさんだと思ったのでしょうか? 彼女は私たちのことを知って元の世界に帰るのを邪魔しようとしていたのですか? 何かの陰謀に巻き込まれたのでしょうか?」 「そんなのおかしいわよ。このタイミングで私たちが来たのは偶然なんだから」 「本当にメイドさんなの?」  3人の率直な意見を聞いて、甘利(あまり)は意外だと思った。  答えが目の前にぶら下がっているのに、後一歩で手が届くのに届いていない。  それが少し寂しくもあった。
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