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「この場に絵画がなかったのは、あのメイドさんが持っていったからです。でもみなさん勘違いされているようなので言っておくと、あのメイドさんは私たちを騙して落としいれようとか何かしらの陰謀があったというわけではないと思います」
「どういうこと?」
やはりわからないという餡子(あんこ)はツインテールを後ろに払って真剣な顔で聞く体制を作った。
瑠湖(るこ)とレミリも真面目な顔をして甘利(あまり)を見た。
それに変な緊張感が出てきたことに甘利(あまり)は少しだけ驚いた。
普段は自分の考えを誰かに話す機会があまりなかったのだ。
落ち着くためにいつも手に持っている本を一度開いて、両手でぱたりと閉じた。
「では、おほん。え~と、まず、メイドさんが絵画を持っていってしまったのは偶然だったのではないでしょうか? そして、ここは市場です。食べ物だけでなく、さまざまな物品が売り買いされています。であれば……」
餡子(あんこ)は自然に答えが口から出ていた。
「絵画はこの市場で商品として売られていた?」
「はい、きっと、絵画を買いにこの市場に来ていたのだと思います。そう考えれば私たちが市場に現れたことも、絵画がなくなってしまったことも辻褄が合いますよね? もともとすぐ目の前の商売人が商品として絵画を売っていて、私たちが異世界に到着した。その後、メイドさんが買っていった。あの時ぶつかったメイドさんは決して偶然ではなかったというわけです」
「本当ですわ! これ以外きっとありませんわ!」
レミリは小さく拍手をした。
「なるほどだね! そういえば……」
ふと、瑠湖(るこ)はメイドさんが背中に大きな板状の風呂敷を背負っていたことを思い出した。
あの背中に背負っていたのは木の板などではなく『絵画』だったのだろう。
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