第三章 ギルドと怪盗

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 4人で話し合った結果、市場の商売人の中でメイドに絵画を売ったおじさんに話を聞くとにした。  市場の通りの端にある3畳ほどのスペースで商売している50代くらいの男性がそうである。  絵画を売った際に、メイドさんと何か会話していないか、身元の情報を聞いていないか、分かることがあるかもしれないと思ったのである。  この中で一番コミュニケーション能力の高い餡子(あんこ)が声をかけた。 「すみません」 「ん? わるいけど、売れるものはもうない。他のところに回ってくれ」  スペースを見ると、確かに売れそうなものは一つも置かれていなかった。  メイドが持っていただろうから絵画もなかった。  とはいえ、この場所で売り買いをする商売人にしては、売り物がないというのも不思議である。 「商人の方ですよね?」 「……ああ、そうだ。いや、そうだったの方が正しい。俺はもう商売人から足を洗うことにしたんだ。さっきの絵画で最後だよ。そもそもこのスペースで売っていたのはあの絵画一つだけだしな」 「そうですか……じゃなくて、話を聞きたいいんです。さっきメイドの人に絵画を売りませんでしたか?」 「そういうことか。ああ売った」 「目に眼帯と腕に包帯を巻いたメイドに?」 「……ああ、『バヌス・ルーベル』のことだろ? ……売ったけどそれがどうかしたか?」 「メイドの人がどこに行ったとかわかります?」 「いや、それはさすがに分からないな。彼女とはほとんど会話をしていないんだ」   「じゃあ、そのバニュ……」  餡子(あんこ)は絵画の名前を覚えることが出来ていなかった。  甘利(あまり)たちにはすでに知っていることだが、彼女は横文字に弱いのは昔からで世界史が苦手だ。 「『バヌス・ルーベル』な」 「そう、バナス・ルーベ? バナ・スプレー? どっちでもいいわ。私たちにはそれが必要なの!」 「そういわれてもな」 「お店の在庫はないんですか?」 「あれが最後だ。お嬢さんは知らんのだろうが、あの絵画はとても高価な品物だ。おいそれといくつも売れるようなものじゃないよ。油に独特の角(かど)がついているから独創性が高い作品としても有名だ。一度本物を見たことがあれば贋作だとすぐにばれてしまうからな。残念だがもうない」 「そうですか……」
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