第三章 ギルドと怪盗

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 最初に気づいたのは瑠湖(るこ)だった。 「あれ? 戻ってないよ?」  餡子(あんこ)もすぐに周囲を見回して目を見開いた。 「どうして?」 「戻れなくなってしまったのでしょうか?」 「のん気なこと言ってる場合じゃないわ。原因が分からないと、私たちは一生元の世界に戻れないかもしれないのよ?」 「……」  甘利(あまり)は、3人の顔を見た後、もう一度絵画に目を向けた。  絵画から後ろ足で少し離れて、もう一度元いた位置に戻る。それを何度か繰り返した。 「甘利(あまり)ちゃんどうしたの?」   「ちょっとこの絵、違和感がありませんか?」 「え? う~ん。そうかな?」 「違和感ねえ……、確かにちょっと」  レミリははっきりと気づいた。 「もしかして、偽物でしょうか? 油の立体感が滑らか過ぎる気がします」 「え? よくわかんないよ……」 「私にも分からないわ……」  甘利はエミリの指摘に頷いた。  試しに油絵を斜めから改めて観察した。 「もう少し絵の端々に角(かど)があった気がします。帰れない事実を加えれば可能性はかなり高くなります」  戻れると思った矢先だったからこそ、ショックも大きかった。 「お腹減った~~~」  目を離したら地面にへたり込みそうな瑠湖(るこ)を見て葛藤を抑える甘利は、これからのことを考えるのだった。  とりあえず、4人は絵画を探すことにした。  それが出来るまで異世界で暮らすことも覚悟しなくてはならないだろう。  せっかく総合冒険者ギルドを教えてもらったのだから、甘利の提案で相談してみることにした。 「総合カウンターはこっちだって」  カウンターに座っている男性に相談してみる。  代表として聞くのは、割としっかりしている餡子(あんこ)だ。 「本日はどのようなご用件ですか?」 「その、私たちここに来たの初めてなんですけど、お金もないし仕事もしてないのでどうしたらよいのか聞きたのですけど……」 「それは大変ですね……。そうなりますとこちらからは融資の形で支援をしながら仕事をしていただき、その中から返済を行ってもらうことで援助が可能です」 「ちょっと待ってください。どうする?」 「私もいいよ」 「構いませんわ」 「それでいいのでは?」 「決まりました。この4人です」 「そうですか、では説明いたしますね」
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