第三章 ギルドと怪盗

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「私、考えたんです。素材を置いていく謎、そして偽の絵画を盗まれた事件。もし、二つの事件の犯人が同じだった場合、あまりにも支離滅裂だと。愉快犯ならもっと目立つことをするはずですし、同じことを繰り返すのも変です」 「そ、そうか? だが、どうしてそこから俺が犯人だと決め付ける?」 「普通はそうですよね。でも、ギルドに素材を持ち込むという地味な犯行に加えて絵画を盗む犯行。もしこの二つはある一つの目的……いえ、犯人の意図があるとすれば、なんらかの関係があるはずです」 「想像力がたくましいようだが……犯人が一緒だって無理があるんじゃないか?」 「いえ、私はこの事件の流れに飲まれないように推論を重ねました。するとどうでしょう? 犯人は絵画を盗むのが目的だったのではなく、回収するのが目的だとすれば? こう仮定すると、最初の素材を置いていく謎に一つの結論を与えることができます」 「……」  おじさんはそれを聞いて黙りこんだ。 「仮説はこうです。絵画が偽者であることを知りながらそれを売った商人がいた。犯人は金銭を得るためやむを得ず偽の絵を売った。けど、その罪悪感からギルドが利益になるようなモンスター討伐と素材の無償提供を続けた。しばらくすると、お金の問題は解決した。もともと偽の絵画を盗んでその代金を返却するつもりだったのではないでしょうか」  おじさんはそれでも無言で地面を見つめた。 「う~ん、ルコにはちょっと難しいね……。結局どういうことなの?」  瑠湖(るこ)のもわかるように甘利(あまり)は順を追って説明した。 「おじさんは借金があると言ってましたよね?」 「うん、たしか言ってた」 「以前、お金に困っていたとも。借金の期日に間に合わないと気づいたおじさんは、偽の絵画と知りつつ売った。でも庶民感覚を持つおじさんはその罪悪感に耐えられなかった。そこで絵画を盗むまでの間、ボランティアをした。そして、先日メイドから支払われたお金を盗んだ絵画のそばに置いて逃げた。おじさんのその体の傷は、モンスターと戦ったときに出来た。これが私の仮説です」 「言っていることは分かったけど、おじさん……本当なの?」  そこに、餡子(あんこ)とレミリが現れた。 「本当よ!」  おじいさんが答える前に餡子(あんこ)が宣言した。
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