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すっと此方を射抜く瞳に囚われた。
老眼鏡越しの彼に見慣れていたからか、
綺麗な色の瞳に吸い込まれそうになる。
至近距離でハルに見つめられている、
それを理解した瞬間顔から火が出そうになる。
作業台とハルに挟まれ身動きのとれない私は、
どうしたら良いかわからずバカみたいに見つめる。
「僕はいつだって、貴女に、いちばん綺麗でいて欲しいんですよ。」
「…え?」
耳元で囁かれた言葉が
入って来ても全然理解できず
間抜けな声しか出ない。
彼の瞳に真っ赤な顔の自分が映っているのを見つけて、びっくりして顔を背ける。
「気づかない貴女が鈍すぎる」
怒ったような声と同時に、
ぐいっと上を向かされて彼の唇が降って来た。
驚いて固まる私を見下ろして笑う彼は
まるで知らない人のようで、
私の胸は一足早く春が来たように
軽やかに躍ったのだった。
(顔真っ赤。それは酒の所為?)
(ハルさん。ドキドキし過ぎるので、出来たら眼鏡をかけて下さい。)
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