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全く父さんも、嘘が下手だな
声も震えて今にも泣き出しそうな表情をして
これは強制だ、拒否権なんかまずない。
ほんと、政府も勝手なことをしてくれる
僕達メンバーを決めたのは父さんではなく、政府であるのは確かだろう
だけど、父さんはあえて逃げ道をつくり僕達にチャンスをくれた
いまだ誰も何も言わない中、僕はスッと手を挙げる
父さん、逃げ道をつくってくれてありがと
チャンスをくれてありがと
───────だけど、僕は
『ど、どうしたんだね、神崎くん』
父さんの声が上擦るのがわかる
『承諾します』
その一言で充分だった
父さんだけでなく彼方さんの顔にまで絶望の文字が浮かぶ
今にも泣き出しそうな二人をみて心が痛む
それでも、僕は前を見据え言葉を紡いだ
『理事長申し訳ありません。しかし、これに拒否権はない、そんなこと僕でもわかっています。
そして、貴方が逃げ道をつくってくれたこともチャンスをくれたことも感謝します。
必ず生きて帰ります。生きてまた、僕を叱ってください。
‥僕、神崎 奏は『WORLD』に所属することを承諾致します。』
そう、胸を張って言った
父さんと彼方さんからの瞳からは涙が流れる
みんなも、神妙な面持ちで僕の言葉を聞く
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