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ノーラはその婚約者にまだ想いがあったのかもしれない。一瞬、寂しそうな顔になった。
「全てやり直しですね。今回の事、両親に打ち明けようと思います。」
「…どうなるの?」
ピアリは心配になった。
「父は優しいけれど正義感の強い人です。役人に訴えるでしょう。」
「罪になるだろう?」
エルグも心配そうだった。
「ええ…」
みんなの大切な想いのこもった品を盗んで心を傷つけた。時にはその身体にも傷を負わせた。
その罪は償わなければ…
「ここの法だと傷害と窃盗は鞭打ちだよ。みんなの前で…」
医者が言った。今では彼の怒りも消えていた。
鞭打ちの痛みと領民達の目…侯爵令嬢には過酷だ…
「それだけでみんなから許してもらえるとは思いませんが…」
ノーラの表情は暗いものでは無かった。むしろ晴れやかで美しかった。
「そんな事は無い!きっとみんなもわかってくれるさ!」
エルグは泣きながら言った。
「私は帰ります。もうここに来ることは無いでしょう。今まで本当にありがとう。」
ノーラはピアリを見た。
「ピアリ、最後にほんの少しセレにお願いしたい事があるのだけど、いいかしら?」
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