第4章 響く歌声

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ノーラは濡れ衣が晴れて自由の身となった。 しかし外出する姿を見た者はいない。 「ノーラさん、大丈夫かしら…」 ピアリはずっとノーラの事が気になっていた。 もう少し励ませる事があれば…とセレも思っていた。 そこに医者が収穫祭のチラシを持ってきた。 「楽器の演奏や歌の得意な人を募ってるよ。」 「ピアリ、歌えば? ピアリの歌でノーラさんを励ませるんじゃないか?」 エルグが真っ先に勧めた。 「いいと思う。俺もヒターラなら少し弾ける。ピアリの歌の伴奏に丁度いいだろう。」 セレも賛成した。 ヒターラとはギターとリュートの中間の様な弦楽器だ。 セレの唯一の趣味だ。離宮に自分のものがあったのだが、荷物を増やしたく無いので置いて来てしまった。 「僕も何かやりたいけど、楽器は使えないなぁ。」 ルルグが言った。 「打楽器とか笛とか、少し練習すればできるものがあると思うわ。」 「笛か!笛がいい!」 「エルグは?」 「俺は遠慮しとく。食う事に専念するよ。」 エルグは多勢の前に出るのは好きではなかった。 「わかった。俺達は少し練習しなきゃな。」 セレは町に出て安物のヒターラと竹笛を調達した。
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