第4章 響く歌声

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「セレ…そんなに大変だったとは…」 エルグはもう涙ぐんでいた。 セレ自身は、自分が苦労しているとか悲しい身の上だなどと感じた事は無い。 それに旅も楽しかった。ただ、ピアリの事だけは… 「俺は、ピアリを母親に会わせて無事にローエンの元に返す、という事で一緒にいるが、逆に彼女を危険に巻き込むのではないかな? ピアリは一度ローエンの所に戻って、改めて別の人間と旅に出直した方がいいんじゃないか?」 「いや。」 エルグはキッパリと言った。 「セレとピアリは離れたら絶対に後悔する。平穏無事だけが幸せじゃないだろ。それはピアリも良くわかっていると思う。」 『離れた方が後悔する』 その一言にセレは心が決まった。 「…エルグに話して良かった。ありがとう。」 ほぐれた笑顔でセレは部屋に戻った。 ピアリとルルグが心配そうな顔で待っていた。 「ピアリ。」 セレはピアリの気持ちをもう一度だけ確かめようと思った。 「俺はこれからもきっと狙われる。 君を守ってくれ、とローエンに頼まれているのに逆に危ない目に遭わせてしまうかもしれない。 …それでも俺と一緒でいいのか?」 それを聞いたピアリは驚きの表情になった。
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