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いつの間にか夏に覆い尽くされていた。
強い陽射しに、風景がガラス細工の様に煌めいてまぶしい。
セレ達は、その中を次の集落を目指して歩いていた。
「今度はどんな所だろうな。」
身長2メートルの大男エルグが言った。
「多分また農村だから、この間の村とそんなに変わらないだろう。」
セレが答えた。
彼は風の魔法を使えるから、風の具合で遠くの集落の雰囲気を感じ取れる。
魔法を使えるかどうかは体質。生まれつきのものだ。
ヴァシュローク曰く
『魔法使いと普通の人間は、細胞の振動が違う』
のだそうだ。
セレは父親からは『風』母親からは『大地』の魔法を受け継いでいた。
ランディール家は代々「魔法使いの血」を重んじていたから、遠い祖先から『水』『火』の魔法の力も貰っている筈だが、少々苦手だった。
セレとエルグの後ろでは、ピアリとルルグがしりとりに夢中になっている。
「り…りんご!」
「ごま。」
「…マッシュルーム!」
「麦。」
ルルグの方が余裕で答えていた。それにしても
「食べ物ばかりだな。」
エルグが笑った。
確かにここの所、あまりいい物を食べていないな、とセレは思った。
「次の村では少し金を作ろうか。」
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