第5章 風車小屋と竜

3/98
前へ
/266ページ
次へ
セレは高価な装飾品を持っている。 だが、ほとんどが両親や弟、ヴァシュロークから贈られた大切な品だ。安易にそれらを売ろうとは思わなかった。 金貨も持っているが、今の身なりで出したところで『何処で盗んだ?』と言われるのがオチだ。 村落が見えてきた。今度の村の方が人が多い。農家の規模も大きい。 「農場で働くのもいいかもな。」 セレもエルグも体を動かすのは大好きだ。 どこで働こうか…と村を見ていて目に付く物があった。 どの家にも戸口や窓の辺りに、小皿に入れた白い粉が置いてある。 「砂糖?塩?それとも小麦粉…?」 「何か意味があるのかしら?」 そんな話をしながら、ある家の前を通り過ぎようとした時 「小麦ってのは昔から石臼挽きが1番て決まってるんだ!」 「臼は使うさ。機械で動かすだけだ!」 「そんなの機械油で臭くて食えるか!風車に限る!」 「いい加減にしろよ!時代遅れもいいところだ!」 「何だと!」 怒鳴り合う声。 そして、ガシャン、ドスン、と大きな音。喧嘩になっているらしい。 いきなりセレ達の目の前のドアが開いて男が飛び出して来た。初老に見える。 その人物目掛けて、あとから出て来た男が殴りかかった。
/266ページ

最初のコメントを投稿しよう!

368人が本棚に入れています
本棚に追加