第5章 風車小屋と竜

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ラドニーの父親は風車小屋に住んでいた。名をハンという。つまり「手」だ。 小高い丘の上、いい風に恵まれた場所にその風車小屋は建っていた。 風車の回転力で小屋の中の石臼を動かし、小麦を粉にする。 10年以上前はこんな風車小屋が20戸以上はあったが、今はここだけだ。 建てられてから凡そ50年。父親から受け継いだ物だ。 この小屋には大切な思い出と誇りがある。孫のルーチェもここの粉で焼いたクッキーが大好きだ。 それにまだまだ働ける。 工場の冷たい金属の臼では、ふっくらと美味しい小麦粉なんかできる訳がない。 そう思っていた。 しかし、今やほとんどの農家はその工場に製粉をまかせている。 大量生産のおかげでやはり儲かるのだ。味も思ったほど悪くない。 おかげで風車小屋は閑散としていた。 「何とかしたいもんだがな…」 ハンはもどかしさでいっぱいだった。
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