第5章 風車小屋と竜

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ラドニーの家ではセレが腫れた頬を冷やしていた。 ラドニーの妻が冷たいジュースと焼き菓子を出してくれたが、セレはほとんど口に入れる事ができない。 ジュースは少し飲めるかもしれないが、柑橘系の酸っぱい香りがする。傷に沁みそうだ。 そのセレの目の前で、何とも美味しそうに焼き菓子を頬張るエルグ。 「これは何ていうお菓子?」 「マドレーヌよ。」 「これは美味しい!香りもいい!セレ、残念だな。」 エルグはご丁寧に手で煽って香りをセレの方に送ってくる。 セレは黙ったまま、ちらりとエルグを睨んだ。 …全くこいつは… そんなセレに、少女が冷ましたハーブティーを持って来てくれた。 この家の娘ルーチェだ。「灯火」の意味だ。ピアリよりも少し年上に見える。 「どうぞ。これなら飲めると思うわ。」 ありがとう、と言いたいが口が思うように動かないので、少女の目を見て表情だけで挨拶をした。 「どういたしまして。」 ルーチェは笑顔で答えてくれた。 ラドニー夫妻にはこの上なく大切な一人娘だ。 「パパとお祖父(じい)ちゃんはまたケンカをしたの?」 ルーチェに訊かれてラドニーは少し困った顔になった。
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