第5章 風車小屋と竜

88/98
368人が本棚に入れています
本棚に追加
/266ページ
数日後。 ルーチェとジンはハンの風車小屋にいた。 「おじいちゃん、あのね…」 ルーチェがはにかみながら、ジンとの事を報告した。 「…そうか…ジンとね…」 ハンの顔がほころんだ。 「ハン、さん…」 ジンとハンが話すのは何年ぶりだろう。 「ハン、でいいよ。久しぶりだなぁ。ジン…いや、ラドニー。」 「…わかっていたのか…」 「ああ。ひと目でわかったよ。でも声をかけられなかった…。君が怒っているんじゃないかと思って…。」 「怒っている?何故?」 「あの時、君が待っているのは分かっていたのに行かなかった…。」 「いつかそうなる事は覚悟していたよ。…君は今何歳?」 「もうすぐ60だよ。」 「僕はやっと20歳だ…いつまでも一緒に遊べるはず無いよ。怒るだなんて…。 それどころか、あの時狩人を追い払ってくれたのは嬉しかった。風車小屋を守る、って言ってくれたのも。」 「ジン…」 「僕はやっぱり人間と一緒にいたい。独りはつまらないよ。…ルーチェみたいに幸せをくれる人もいるしね。」 ジンはルーチェを見つめた。ルーチェは微笑んで言った。 「おじいちゃんのクッキーとジンのクッキーは同じ味がするのよ。」
/266ページ

最初のコメントを投稿しよう!