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「無理して平民にならなくても、ある程度の身分だって事にすれば?貴族だって旅をしている人はいるよ。」
「いや、このままでいいんだ。しかし…身分か…。誰もいない草原で平民の服装で目覚めたあの日『王室とは完全に縁が切れた』のを悟ったよ…もう何の身分も無いと…」
…いつかこんな日が来るかもしれない、と常々思ってはいた…
草原で1人目覚めた時、なぜ自分が死んでいないのか?との疑問と共に、両親とも弟とも二度と会えないという悲しみが胸に広がった。
ピアリが来たのはそんな時だった。
彼女に名を呼ばれて振り返った瞬間に、目に溜まっていた涙が溢れ落ちてしまった。
「ピアリと初めて会った時、俺はただ悲しかったんだ…でも彼女を見た瞬間に『これではいけない』と思った。
過去にしがみつく事なんてできないんだ。今の自分で生きていこうと…。
あんなに可愛い子が来たら弱い所なんか見せられないだろ…もしかしたらそれもヴァッシュ様の計算かな…」
「なんだ…。一目惚れじゃないか。」
「一目惚れ?そうか…最初から俺はピアリにまいっていたのか…。完全に一方通行だけど…」
「そうでもないかも。最近のピアリはちょっと違う。…気づかない?」
「最近はよそよそしいな…寝る時も隣に来てくれないんだ。今まではすぐそばでスースー眠ってたのに…。俺は何か気に入らない事をやったかな? 」
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