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「…………」  真っ白なケント紙を前に、僕はしかめっつらで腕組みをしていた。  そのうち大きく息を吐きつつ後ろに倒れ込み、大の字を作る。 「……ダメだ。描けない」  僕はマンガ家だ。と言っても作画専門の。  全てをやり尽くされたこの世界じゃ、イチから原作を考える者はいない。今のマンガ家は過去の作品をリメイクしたりアレンジをくわえたりしてかろうじて食いつないでいるのが現状だ。  絵が描けるだけまだマシで、原案が全ての小説家や脚本家は一人残らず完全に廃業した。  それでも僕は満足なんかしていない。いつか僕も、僕だけのオリジナル作品を描いて公表したいと考えている。考えてはいるのだが、どんなに考えても既存作が頭に浮かんで邪魔をしてくる。やっといけそうなのを思いついてもネットを調べてみると似たようなのがわんさか出てくる。これじゃあとてもオリジナル作品なんて描けたもんじゃない。  本当に人類はもう、新たな物を生み出せなくなってしまったのだろうか。本当に、人の持つ発想力は底をついてしまったのだろうか……。
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