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分からない。 なぜだ。 「どうされました?若君」  執事のヘンデルがクスクスと面白そうに笑うのを、国の若き王アルベルトは忌々しく睨み付ける。  その足元――爆ぜる暖炉の傍には美しくラッピングされた贈り物が天井近くまで積み重なっていた。  今夜はアルベルトの19回目の誕生日だった。  権威と栄光を物語るような盛大な誕生祭を催した。アルベルトは国中に年頃の娘は全員出席するようにと触れを出した。これは、アルベルトの花嫁探しでもあったのだ。  しかし、着飾った娘たちのどこを探しても、目当ての少女はついぞ見つからなかった。 「どうしてあの娘は来なかった?」 「あの娘とは?」  分かっているクセに意地悪なヘンデルはわざと首をかしげる。 「あいつに決まってるだろう、あの眼鏡女だ」  アルベルトの誕生日会に顔を出さなかった娘は、この国でただ一人。  変わり者のコロンバインだけだった。
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