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「でもごはんまで本当に助かったよ。久しぶりに誰かの手料理食べた」
「初デートで期待している女性を無神経にもタクシーで帰らせる人ですもんね。そういうことしなければ彼女の一人や二人なんてすぐできるんじゃないんですか。一応顔は整ってますし」
「ねえ褒めるか貶すかどっちかにして。そしてよく覚えてるよね。俺が初めてこのお店に来た日のこと」
「・・・そりゃ目の前であんないたたまれない光景繰り広げられたら誰でも覚えてるでしょう」
「ははは、まあさっき結野くんが褒めてくれたとおりあんまり女性には不自由してないんだけどね。これでも婚活してるんだよ」
「・・・もう婚期逃してるんじゃないんですか」
そんな不憫な奴を見るような目で見ないで。
彼の元々吊り上がった目尻がなんとなくいつもより下がっているように見えるんだが。
「まあ理想を追い求めてるから、そんなに焦ってるわけでもないんだよ。だから最近は一時休戦なの」
「・・・最初に連れてきてた女性、結構綺麗な方だったでしょう」
「顔はね。尻がダメダメだった」
「あんた最低っすね」
しまった。思わず理想について語ってたらケツの話に・・・。
「い、いや、まあ人それぞれじゃん!好みって!俺の最優先事項は尻ってだけでさ!」
「まあ、勝手ですけど、本当に婚期逃しますよ」
「ははは、心配してくれてありがとう。それでなんだけど、日曜のお礼もしたいから何かほしいものとかないかい?」
よっし、完璧な話題転換!!
なんならBAR以外ででも彼のパーフェクト下半身が拝めるチャンス、
「結構です」
とかないよねええええええええ!
つれない!!本当につれない!!
「そんな遠慮しないで。俺も気が済まないからさ」
「本当にいいです。そもそも吃驚したとはいえ、あの雨の中で突き飛ばした俺のせいでもあるんで」
「あ、マスター!ちょっといい??」
「あんた人の話聞いてんですか」
あきらめきれずに彼を無視してマスターに話しかける。
これじゃ埒あかない。
「城崎さん、いかがしましたか」
「今日の結野くんの勤務って閉店時間までですか?」
「ちょっと、なに人のプライバシーを勝手に、」
「閉店時間までですよ。どうしました?」
おかげで彼の本日の勤務終了時間をゲッツ。
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