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このBARの開店時間は18時。閉店時間は0時。
個人営業で、休業日もマスターの気まぐれ。
いつもニコニコ笑っているマスターの作る癒し空間がこの〈BAR〉。
客はついつい時間も忘れて長居してしまう。俺もそんな中の一人ではあるが、開店と同時に入店して現在は21時をまわるところである。
つまりは居すぎ。※彼的に。
「明日朝早くから何か予定とかないんですか」
「・・・帰ってほしいならそんなに遠回しに言わなくてもいいじゃない」
めんどくさそうにウィスキーのロックを用意している彼に思わず眉尻が垂れる。
まあ、いつもいても2時間くらいだしね。
それ以上いても男性の一人客が長居してるのは目立つ。そして滞在時間2時間を過ぎると彼の眉間の皺が深くなるからだ。
「まあ、今日はこれでお会計で。ごめんね、長居して」
「ほんとですよ」
「おーい、俺、客!」
アルコールを一気にあおり、苦笑いするマスターに支払いを済ます。
そんなマスターに小さく耳打ちをし、上着を着て店を出ることにした。
彼は一度もこちらに視線を向けることも、言葉をかけることもなかったけども。
――――――――まあ、すぐに会うからいいんだけどね!
「・・・なにやってんです」
「やっほう!お疲れ!」
「・・・通報・・・」
「待って待って!!」
店を出てから3時間と少しが経ったころ、俺はBARの店先にいた。
そこから出てくるであろう彼を待って。
「はい、おなかすいてない?」
「・・・なんですか、それ」
「ん、肉まんとかエトセトラ」
BARの外へつながるドアを開けたらすぐ目の前にいた俺を見て、即座にドアを閉めようとする彼に、用意していたものを袋ごと差し出した。
「こんなんじゃ足りないかもしれないけど。おなかすいてない?良ければ食べて」
「・・・礼のつもりですか。いらないって言ったのに」
「うん、でもそれじゃあイーブンじゃないでしょ」
「またわけわかんないこと言って・・・」
ニッコリと笑って、受け取ろうとしない彼に肉まんやらをそのまま押し付けた。
ギロっと睨まれてますけど、大人はそんなこと気にしません。
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