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そのままちびちびつまんでいたら、手が空いたマスターが困り顔でやってきた。
「すいません、ここではあんまり品ぞろえが良くなくて。結野くんに作ってもらえるような食材がないんですよねえ」
「ああ、いえ。そんな気を遣わないでください。ここのメニューもおいしいんですから」
別にここのメニューが気に食わないわけではない。
なんならめちゃくちゃおいしい。
けど、ただ単純に彼のあの手料理が恋しいだけだ。
まあ、食べられなくてもこの彼のいる空間にいるだけで癒されてることは間違いないんだけど。
「ねえ、今日は何時上がり?」
「さあ?」
「え、なぞなぞ?」
この空間をもっと持続させたくて一緒に帰れないか暗に訊いてみたら、フツーにスルーされた。悲しい。
「いい年こいた人が泣き真似しないでください。きもちわる、・・・気色悪いです」
「ねえ言い直した意味はなに?ほんとに泣くよ?」
「もっと気色悪いです」
「・・・ただ君と一緒に帰りたかっただけなのに」
「・・・」
ぶすくれたら、彼も呆れたのか、こちらに背中を向けて会話に応えてくれなくなった。
まあ、そのおかげで素敵なヒップラインとこんにちはできてるんでいいんですけど。
わー、今日もなんであなた(※尻)は素敵な曲線を保ってるんですかー?
じいーっと見ていたら、またもや俺たちの会話を聴いていたマスターが苦笑しながら水を持ってきた。
「えっと、チェイサー?まだそんなに酔っぱらってるつもりなかったんですけど・・・」
「いえいえ、お帰りの前に召し上がった方がいいかと思いまして」
「・・・?えっと、俺そんなにうるさかったですか?」
まさかマスター直々に出禁宣告・・・???
そんな絶望感漂う俺にマスターは笑顔でさらなる地獄へ突き落す―――
「結野くん、あと10分で上がりの時間なんです」
「マスター!!」
わけないですよねえ!!!
ほんとマスター、あなたは神様ですか???
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