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「あ、んた、なんでこんな真似・・・っ」 「あー・・・えっと・・・」 悶々としている俺に、真っ赤な顔で睨みつけてくる。 うん、もうさすがに酔いも醒めてきている。キッカケは酒のせいと言えども、なんとも思っていない、しかも同性に、普通はこんなことしないわけで。 なんなら勃起もしちゃってるし、今すぐその赤い顔をつかんで更に深い口づけをしたいとも思っちゃってるわけで。 ・・・ええと、ということはどういうことで??? ただの性欲の対象としてではないことくらいわかってる。いつもとは違う彼の反応を愛しく思うくらいの感情はある。 けど、それを言葉にする術を思いつかなかった。 言い淀んでいると、しびれを切らした彼がもう会話を諦めたように視線を外した。 「・・・もう帰って下さい。酔いも醒めたでしょ」 「え、や、ちょっと待って。まだ整理が、」 「いい加減にしろよ」 「っ、」 今まで彼にこんなに怒気を孕んだ目で睨まれたことがあっただろうか――――― 「あんた、ゲイでもなんでもないだろ。人をからかうのも大概にしろよ」 「・・・? たしかにそうだけど、からかってなんて、」 「女のケツばっか追いかけてきたノンケが興味本位でしてきたことの何がからかってないって?いいから帰ってくれ。そしてもう店にも来るな」 「っ!?ちょっと本当に待ってよ!?話を聞いて、」 「もう顔も見たくないって言ってるのわかんない?消えろ」 「っ」 完全なる拒絶。最後は体ごと背けられ、この空間に俺が存在すること自体を拒否しているようで。 このまま帰ってしまえば、もう彼と一生会えないかもしれない、そんな絶望にも近い感情と、執拗に迫ってもうこれ以上拒絶されたくないという感情がない交ぜになる。 それでも。 立ち尽くしながら迷った時間はそれほどなかったと思う。 ――――――これで終わりになんてしたくない。絶対に。 「・・・今日は本当にごめん。でも誓って君をからかってあんなことしたわけじゃない。・・・もし、また話せる機会をくれたら嬉しい。そのときは今日みたいなこと、絶対にしないから」 玄関で靴を履き、最後までこちらを向こうとしない彼に今言える言葉を伝えた。 仕事用の名刺に個人用のアドレスを走り書きし、それを目につきやすいところにおいて、彼の家を出た。
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