15人が本棚に入れています
本棚に追加
あのやらかしてしまった日から、2週間が経とうとしていた。
結局、彼から連絡は一切ない。
そして、あれからBARにも顔を出していないので、会っていないわけだ。
すべて自業自得と言えるわけで、だからこそこれ以上自分から行動を起こすことができない。
でも。でもさ・・・
「まじでもう会えないとか嫌なんだけどぉぉ・・・」
「貴重な昼の時間にそんな悲壮的な顔こっち向けないでくれ・・・。こっちまで気分が滅入る・・・」
ただでさえ意味のわからない同僚の話を聞いているだけで混乱しているのに、とボソボソ呟く真田が、今は真向かいでボルシチを啜っている。
遡ること数分前。
昼休憩。
最近すっかり馴染んだ真田に外でメシを食わないかと誘われ、連れ出されていた。
つい先月オープンしたばかりのロシア料理屋。店主はロシア人。
それだけでもここらオフェス街で話題になりそうだったが、少し大通りを外れた、所謂穴場というところに店を構えているため、客で殺到している、ということはなかった。
が、
「へーイ、客サン!ランチ、オッケー?キョウ、ボルシチ!」
店のドアを開けた瞬間に、陽気な店主に片言で話しかけられ、とまっどいると店内の他の客にクスクスと笑われるくらいには、開店して一か月でアットホームな店になっているらしい。
ボックス席に座ると、すぐにボルシチとパン、サラダとよくわからない魚料理が出てきた。
ニコニコ笑いながら、「フーフー!、シテ食ベナ!」と店主に言われ、それに苦笑しながらボルシチに口をつけ、やっと昼休憩に入った気分に。
「うっまあ・・・。総務の女子たちが噂してただけあるわ。な?」
「ああ、うん」
「・・・はぁあ・・・。まだ悩んでんの?」
「え?」
ちびちび食いながらテキトーに真田に相槌していたら、重い溜息をつかれ、睨まれた。
頭の中で俺をきつく睨んでくる結野くんの顔がリフレイン、顔をしかめる。
「気づいてないんだろうから言うけど、お前ここ最近目が死んでるよ」
「・・・」
「何か悩んでるんだろうなとは思ったけど、無理に聞くのもな。うまいもの食えば気分も上がるかなって思ってこうやって外に連れ出しても、ずっと辛気臭い顔だし」
それを聞いて申し訳なくなる。
睨んでくる真田の表情は、今は純粋に心配しているようにこちらを気遣う表情になっていた。
情けない。
最初のコメントを投稿しよう!