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っていうのはさすがに言いすぎたようで、俺には郷田がうつになってしまった直接の原因である取引先だけを担当してもらいたかったらしい。 聞いたところ、その他に郷田が持っていた案件も大なり小なり数は結構あったので、誰か他と分担しながらなら、ということで課長には納得してもらった。 まずは問題の取引先とうちの会社とのやりとりのデータやら郷田のメール履歴をチェックしていたら、なかなかに面倒な担当者らしいことがわかる。 ・・・これは彼に会えそうにもないな。 仕方ない、と意識を仕事モードに切り替え、大きく伸びをする。 そして、問題の担当者へ挨拶の連絡を入れたのだった。 「はぁー、こんなものでこっちが納得するとでも?詰めが甘いんじゃないの」 「・・・申し訳ございません。では一旦社に持ち帰って上にも相談のうえ、再度お伺いします」 「はあ?また時間とれってこと?無理無理。今代案考えてよ。君みたいな大手の総合商社の営業マンなんてこんなの余裕だろ?」 「・・・いえ、とんでもございません。では少々お時間いただきます」 こんの糞狸め。 いっぺん死にさらせ。 郷田の仕事を引き継いで早二週間。 細々とした案件は一番持っている案件が少ない同僚の応援もあって、もう問題はなさそうだった。この案件を除いて。 うちは都内でも有数の総合商社。大手なだけあって取り扱っている商品や分野も様々だ。 経営範囲も国内から海外まで手広くやっている。 今回のこの問題の取引先は、国内有数の日本ワインを製造する会社だ。 「十年前にうちが取引を持ち掛けたときなんて、結構案を出してそっちにお邪魔したんだよ。それをすべてそっちが門前払いして。なのにこんな案しかうちに出してこないってどういうことなの?ねえ?」 まあ、取引が難航している理由はこれだ。 世界的にみても歴史が浅い日本ワインを海外へ輸出しようにも、当時は顧客が見込めなかった。 それがつい数年前の世界的ワインコンテストで日本ワインが賞を受賞し、海外から注目を浴びることになったのだ。 当時のうちの担当者は完全にこの会社の足元を見ていたため、門前払い。 そしてそのときうちに来ていたのが、この担当者、今田。 どれだけ当時失礼な態度をうちがしたのかはわからないが、今になって契約を持ち掛けるうちに対して、良い印象を抱くわけがなかった。
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