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外に出た私を待っていたのは、馬だった。ただの馬ではないらしく、真っ赤なたてがみに鬼のような2本の角。火の国にしか存在しない魔物、『オース』らしい。特に害のない大人しい魔物のようだ。
だが、問題はそこではなく紅夜も輝火も既にオースに跨がっており、残った1頭に私が乗ることなのだろう。けど、普通に考えて平和な日本にいた私が、馬に乗ったことがあるわけもなく、ただただ硬直するしかなかった。
「どうした?」
一旦降りてから紅夜が寄ってくる。素直に一人で乗れないことを伝えることにした。
「仕方ないな。押さえてやるから早く乗れ」
だが、紅夜の返事は悲しくも私の期待したものではなかった。歩くのも嫌だけど、せめて一人で乗るのは勘弁してほしかった。
再度催促してくるので、泣きたくなる気持ちを堪えながら、覚悟を決めてオースに跨がる。乗ることは紅夜が押さえてくれていたからか、すんなりと出来た。けど、ここからが怖くてたまらない。
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