第3章 氷の国

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「全員が集まるまで時間がかかるだろう。俺は宿で休むぞ?」 兵士が出てゆくのを見守ってから、紅夜(こうや)が切り出す。 「客間を用意してやる。好きに使え」 仕事に戻るのか、机に広がった書類を整理しながら蒼真(そうま)さんが鍵を投げる。そう言えば起きてからなにも食べてないことを思い出す。お腹が空いたわけだ。 「それでは一度、火の国へ戻ります。明日昼前には戻ります」 輝火(かがほ)がそう伝えて部屋から出ていく。火の国でも魔物が暴れる事件は起こっている。隊長と副長が同時に国外に出るのだから色々準備が必要らしい。その準備のために一度戻るようだ。 「凍耶(とうや)、それぞれの部屋に案内してやれ」 蒼真(そうま)さんの指示で、凍耶(とうや)が案内をしてくれることになった。促されるように部屋を後にする。紅夜(こうや)桃華(ももか)さんも表情が険しい。今回の事件で思うところがあるのだろう。私にはとても想像つかないけど。悲しみにも怒りにも見える表情からは、痛いほど辛さは伝わる。
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