第18章  雷泪

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迂回するため森の中を静かに走る紅夜(こうや)の耳にも、黒葉(くろは)が派手に暴れているのが伝わる。だからこそ、紅夜(こうや)は違和感を感じずにはいられなかった。 「妙だな」 そう言って立ち止まる。率いる兵も当然足を止めるが、なぜここで止まるのかがわからず皆の視線が紅夜(こうや)へ集まる。 「光の国での戦闘に、闇の国の隊長である黒葉(くろは)が指揮を執る。こんなに異常な光景のはずなのにどうしてか、敵の動揺が全くない。まるで、はじめからわかっていたかのようだ」 そう言われて他の兵たちも違和感に気付く。敵の兵の声や戦闘音に動揺や困惑を感じないのだ。 「力だけが自慢の戦士かと思っていたけど、どうやら君を侮っていたようだね」 前方の木の陰から現れた男。会場でも見かけた男だ。神官の1人。 「真田ユキムラ。やはり神官が指揮していたか」 敵が神官とわかり、他の国が攻めたわけじゃないと安心する。同時に神官を相手にしないといけないと緊張が走る。
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