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目を覚ますと私に用意された客間だとわかる。夢で見た彼とはあれから1度も会っていない。いや、会えていない。どうなったのか、生きているのかさえ私には知る術はなかった。
いつからか、この出来事は私の中で眠っていた。思い出すことを拒絶するかのように。あの場に誰がいたのか思い出せない。彼がナイフで刺されたこと、本当は私が刺されるはずだったこと以外は思い出せない。
寝汗で全身が気持ち悪い。何故今になってこの夢を見たのだろう。
ここ蓬莱島に来てから、胸の奥底に沈めた記憶が色々覗く。私がここに来たことは偶然ではなく必然だったのかと思えてくる。なにか訴えかけられているような気がして落ち着かない。
「香恋、起きてるか?」
廊下から紅夜の声が聞こえる。何故か気持ちが少し落ち着く。
「どうしたの? 皆揃って」
そこには隊長が全員いた。
「そろそろ出発する。香恋はすまないがここに残ってもらうが、いいか?」
それは覚悟していたので、大人しく頷くしかなかった。
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