76人が本棚に入れています
本棚に追加
蒼真は本格的に戦うことはせず、少し攻撃しては退避を繰り返す。敵の兵も気付かないほど緩やかに砦から遠ざけるように。指揮官が気付いた頃にはもう遅く、砦の門は無防備になっていた。
「これが狙いだったのか?」
門には紫吹の部隊が展開し、指揮官の部隊は挟み撃ちにされていた。
「気付くのが少しばかり遅い。兵の数で差があるのなら分断させるのは基本。何度もそう教えたはずだが。瑛菜」
蒼真の言葉に顔を真っ赤にする青髪の女兵士。
「あんたのそういうところが大嫌いなんだ。人を常に見下して」
「元氷の国組長が自国の任務中に、引き連れた兵士を全滅させ、更に姿を消す。そんな行為をしてどの口が言う?」
刀を瑛菜に向けて殺気を強める。それだけで周りの兵士は味方も含めて足がすくむ。
「後ろからの攻撃だが、油断はするなよ!」
待ちくたびれたのか、紫吹が先に動く。後方からの総攻撃で。先頭で戦う紫吹に恐れをなす者が絶えない。
最初のコメントを投稿しよう!