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ベッドを見下ろすように立つと、鋭い目で私を睨んでいた。何故睨まれるのかわからず、ただ硬直してしまう。
「おい、どこの国の人間だ?
ここへ来た目的はなんだ?」
威圧的な紅夜の声が部屋に響く。
「えっと、日本?」
なんて答えたらいいかわからず、それだけを口にする。
どうやら、その判断が間違いだったようで紅夜の目が更に鋭くなる。
「なるほど。死にたいようだな」
腰にある刀をゆっくりと抜き、切っ先を私に向ける。本当の殺気を直に感じ、私は指1本どころか瞬きさえ許されない感覚に陥る。
「待って、本当なの。変な生き物を追いかけていたら渦に飲まれて、気付いたらここだったの」
死にたくない思いから、掠れるような声を必死に絞り出す。
ゆっくりと紅夜に視線を向けてみるが鋭い目付きも、恐怖に支配される殺気も依然として変わらぬままだった。
「もう一度だけ聞く。死にたくないなら正直に話せ」
本気で私はこの時死を覚悟した。それほどに強烈だったのだ。
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