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母は振り返ると、リビングでティータイムを満喫している僕に言う。
「ちょっと牛乳買ってきてくれない?」
思わず手から離れたクッキーは、無惨に砕けた。
夜は寒いから外へ出るのは苦手だ、と古市勘太郎は不満をこぼしながら玄関の扉を開いた。
玄関から外へ出ると、冬の厳しさを知らしめるように冷気が身体中を駆け巡る。空を見上げるとチラチラと星が瞬き、月の光に負けまいと一所懸命に輝いている。
母、古市晶子の急遽牛乳を買ってきてほしいというお願いを勘太郎は断ることができなかった。それは断ると後々面倒なことになると身に染みて知っているからである。
過去に一度晶子のお願いを断ったことがあったが、その時は晩御飯に出されたものは全て緑色になると
う事態が発生したのだ。しかもそれは半月も続いた。
だから勘太郎は断ることができないのだ。
また、お目当ての牛乳は、スーパーにも、コンビニエンスストアにも取り扱っていないもので、自宅から、徒歩10分ほどの場所にある。を吐く。
勘太郎は「牛乳専門自動販売機」までたどり着くと、財布から320円を取り出し硬貨専用投入口へと手を伸ばす。
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