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緩やかな、見渡す限り緩やかな道がある。そこを真っ直ぐに進んでいけば見慣れたあの場所に出る。
遠くにいた春も随分と歩み寄ってきて、桜が咲きつつある麗らかな日。
必死に勉強した受験に合格した今、こうした穏やかな日が送れていることがとても幸せだと感じる。
僕は時間があればゆったりと過ごすことが多く、まぁ、人からみればだらだらと過ごしてるのが僕の日常なのだろう。
もうすぐ大学生。もう19歳。
ここまでゆるゆると人生を歩んできて、1度も心が揺らぐことがない。そのことを周りは不思議がるが、その理由が僕にはよくわからない。
どうして人は自分と違うものを不思議がり、時には軽蔑をみせるのだろう。
それがずっと、不思議でならないのだ。
あぁ、太陽が暖かい。
不意にそう思って思考をやめた。僕が猫だったのなら喜んで地面に寝転ぶところだ。
それでこそ奇怪な目で見られるのが現実だろうけれど。
しばらく太陽の光を一身に受けていた。僕が船をこぎ始めた頃、ふいに顔に眩しさを感じる。
木々の間の木漏れ日かと目を細めるが、違う。
不思議に思い周りを見渡した。
そこには物憂げな女性が桜の木を見上げていた。
ーーーーーーーーーー
「単調すぎ。ありがち。展開がミエミエ。以上」
いつものようなざっくりとした感想。いつものことだから、傷ついてはいない。これっぽっちも。断じて。
「お前は言葉を選べないのか」
僕は彼に言う。
彼は僕の友人。友人Cとでもしておこうか。
「休日に呼び出して、稚拙な文を読ませられる俺の身にもなってみろ」
うーむ、辛辣。
やはり紹介しておこう。千田優人。
優しい人と書いてゆうと。御両親には申し訳ないが、祈りが届かなかったに違いない。
「悪かった悪かった。稚拙で幼稚な面倒に付き合わせて面目ないな」
皮肉を込めて言う。
まぁ付き合ってもらったのは事実だ。コーヒーを頼んでやる。
「わかってればいい」
反応してやらない。
聞くな。これは僕なりの逃避行動だ。
「ほらさっさと本題に入れよ」
うん、そうだな。そうしよう。
満を持して話を切り出すことにしよう。
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