下僕達の夜

10/18
前へ
/18ページ
次へ
「いつも『ケケケッ』と意地悪な笑い方をして、吾輩たちを困らせるのも、単なる『かまってちゃん』って事ぐらい分かっているだけに……」 「「「憎めないんだよなぁ~」」」  口を揃えて困ったように笑う彼らは、「そろそろ就寝時間だが、明日は特別な日。みんな。今から準備に取り掛かるとするかっ!」という誰かの掛け声に反応し、「「「おーーーっ」」」と拳を上げて、それぞれ決められた持ち場へと移動する。  疲れのピークを脱したのか。  はたまた、疲れすぎてのナチュラルハイなのか、ノリノリでラップを口ずさむ。 「お前何様? 俺、王様」 「「「YO~」」」 「生まれも育ちも城の中。そろそろ世代交代の時代が到来」 「「「YO!」」」 「無敵なオレ様、それって素敵か? 誰でもいいからたまには指摘して」 「「「Oh~」」」 「大地に雨は降っても、俺の心には飴の甘さは染み渡らない」 「「「YO~!!!」」」 「一人で寂しいだなんて、口が裂けても言えないんだ」 「「「Hu~」」」 「ヤル気、強気が王者の印。挫折? 仮説? そんなものは俺には関係ねぇ。自分でも屈折しているとは思うが、俺は自説を曲げない」 「「「Hey Yo!!」」」 「俺はオマエらが好き! 隙のない人間だから言葉に出さないけど、オマエらが大好きだ」 「「「ME TOO!!!」」」  一人が歌い、皆が合いの手を入れる。  それは、暴君だけれど憎めない王様への合いの手ならぬ「愛の手」のようで、料理をする者も、部屋の飾りつけをする者も、皆、楽しげであった。
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

25人が本棚に入れています
本棚に追加