下僕達の夜

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 石を組んで造られた屈強な城壁に囲まれた大きな城。  無駄に広い敷地内の片隅にある煉瓦造りの洋館からは、深夜0時を回っているというのに、窓からは未だ明かりが漏れ、複数の話し声が響いている。 「はぁ~。今日も首をはねられたわぁ~」 「またぁ? ちょっと見せてみなさいよ……あんた。不器用なんだから、自分で縫うなとあれほど……もうっ! こっちに来なさいよっ」 「イタタタタ。く、くび。首もげるって!」 「何言ってるのよ。何度ももげているんだから、一回、二回増えたところで、どのみち、また何か失敗して王様に首をはねられるのがオチなんだから。黙って首貸しなっ」  白衣のいたるところに赤黒いシミをつけたナース姿の女性が、首に縫い目をつけ、真っ青な顔をした男性の頭と、救急箱を抱えてソファーへと移動する。 「今日も今日とて、何様オレ様キング様からの無理難題な命令と悪戯に振り回されっぱなし。吾輩も、もうクタクタですぞ」 「いや。お前の場合、王様に謁見を申し込みに来た多くの使者たちを対応しきれず、もみくちゃにされた挙句、踏みつぶされては悦に浸っていただけであろう?」  あちこちに足跡をつけた男に向かい、疲労感を漂わせた男がフンッと鼻を鳴らす。
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