下僕たちの夜

下僕達の夜

　怪我の手当をしてもらっている者もいれば、愚痴や文句を言い合ってはストレス発散している者もいる。

　背もたれに背中を預けて天井を見上げるような格好で目を瞑っている者。

　ようやく食事にありつけたとばかりにガツガツと食事に夢中になっている者。

　各々好き勝手な事をしているのだが、日中、忙しくて中々顔を合わせることのない彼らにとって、この時間だけは、同じ場所で働く仲間同士が唯一ゆっくり団欒出来る憩いの時間。

「ミンナはまだいいじゃん。アタイなんて、掃除中にバケツの水をひっくり返しちゃったんだけどサ。タイミング悪く、キングが通りかかっちゃって……」

　服の上から腕や足を摩りながら、トボトボと部屋に入って来たのは、顔色のすこぶる悪い女の子。

「あ～。それは運が悪いですなぁ。我らがキングのおみ足に滴の一つでも飛ばそうものなら……」

　気の毒そうな視線を彼女に集中させると、途端に始めるように喚きだした。

「飛ばしちゃったから大変だったのぉぉぉ！　縄で縛られ、木に吊るされたかと思ったら『お前もチャーシューにしてやろうか！』って言われたから……『アタイは、チャーシューどころか、既に干物ですぅ』って叫んだら、天日干しにされちゃうしさぁぁぁっ！　見てよ、この肌。もう、カッサカサで潤いがなぁぁい！　女の子には潤いが大事なのにぃぃぃ」

　キャンキャン喚く彼女をよく見ると、服は破れ、ところどころに血が滲んでいる。