下僕達の夜

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 それでも体裁を保とうと弁解する彼を横目で見ながら、最初にツッコミを入れた男は自身の志望理由を恥ずかし気もなく言い放った。 「はいはい。俺は『衣食住全て当城モチ。若い女性との出会いアリ。王様の元でお金と女に困らないハッピーライフをおくりませんか?』という、名文句にノコノコ応募しちゃいましたけど?」  ドヤ顔がむしろ爽やかな好青年に見えるほどだ。  とはいっても、所詮はゾンビ。  表情はいくら明るくとも、土気色の肌や、たまにポロリと落ちる目玉や鼻を、慌てるでもなしに慣れた手つきで元の位置に戻しているところが何とも言えず不気味である。 「確かに、住む場所も。食事にも。服にも困らない。メイドは沢山いるから女の子との出会いもある! けどな……けどな……」  しかも、彼の表情は徐々に恨みのこもったおどろおどろしいものへと変わり、声を震わせていく。 「出会いはあれども、口説こうにも、デートをしようにも、王様の下僕には休みがないっ! これじゃぁ、カノジョなんて出来やしないじゃないかっ! 広告に偽りあり! ジャ〇に訴えてやる! と、王様に直談判しにいったら……」  プルプルと拳を震わせると、脆くなった爪がボロボロと落ちていく。
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