下僕達の夜

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「『金と女には困らないが、時間に困らないとは一言も書いてないぞ』の一言でハイ! 終了ときたもんだ」  間違った回答ではないだけに、彼のショックと怒りは計り知れなかったことであろう。  血管のかわりに皮膚の下を這いずり回っている蛆虫を浮かび上がらせて熱弁を奮っている。 「とはいっても、何だかんだ言って、うちの王様。嘘は言わないのよねぇ~」  全身を包帯でグルグル巻きにした女性が、テーブルでメイプルシロップをたっぷり入れた水を飲みながら、甘ったるい香りを吐き出しつつ声を出した。 「給料もいいし、待遇も悪くない。時間が無いからお金を使う暇すらない。お陰で、私が死ぬときには、通帳にびっくりするぐらいの金額が溜まっていたわ」 「でも、伴侶も子供もいない俺らに、金が残ってもなぁ」 「まぁねぇ~」  生前。  必死になって仕事をした結果。  たんまりお金は貯まったものの、それを使って遊ぶことも、贅沢することもなく、青春も人生も謳歌することなく散っていった命。  ふと王様の元で生活してきた過去を振り返る。
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