下僕達の夜

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 ゴムで出来たリアルなタランチュラを背中に入れられたり、掃除中にスカートを頭の上まで捲られて巾着結びをされたりだなんて序の口。  床のワックスがけをしている傍から足跡をつけられたりして、ワックスがけだけで一週間かかったりなんていうのは可愛いもの。  芝生の手入れを命じられて庭に出れば、深く掘った落とし穴に落とされ。  変なビデオの影響から、いきなり馬油で鞣した麻縄で縛られたり……  ロクな思い出が無いことに、一同全員、ゲンナリとした表情を浮かべた。  それでも、彼らがここを離れないのは何故か。  それでも、彼らが王様に対し反乱を起こさないのは何故か。  それは単なる『契約関係』だからではない。 「でも。王様は寂しがり屋だから、どんなにボクたちを罵ろうが、何しようが、『出て行けっ!』とは言わないんだよな」 「ついでに、召使という名の下僕達全員の誕生日を覚えているマメさもあるのよね」 「ま。誕生日プレゼントをただでは渡さないツンデレっぷりも困るけどなぁ」 「そうそう。こっちは自分の誕生日すら忘れているっていうのに、朝っぱらから悪戯ロックオンされてヘトヘトになったところで、『誕生日おめでとう』って頬を赤らめるんだもん。怒るに怒れないわよね」  王様の悪口を言っている筈が、皆、何故か口元を緩めている。  なんだかんだ言って、彼らは王様が好きなのだ。
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