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いち
僕の友人、花形くんはとにかくドジな印象だった。大学のクラスが一緒でそれでも最初のうちはあいさつすらしたことがなかった。初めて彼と話したのはいつの日か、忘れてしまったけど。彼のドジが原因で仲良くせざるを得なくなった。なんだったかな、なんせ毎日のようにドジを繰り返す。例えばでいうと、自分のスチーカーの紐をふんずけて転んだ。痛ててと、立ち上がり歩き始めた。けども、紐がほどけたことに気づかず近くにあった石を蹴ってスチーカーまで、跳ばしたこともあった。ぷぷ、今思い出しても笑いが止まらず、思わず手で口覆ってしまった。
また、彼は生真面目で授業を休んだことは1度もない。その為、周りの連中からよく授業の代弁を頼まれた。先生が学生の名前を呼んでいく。彼は、7通りの声を見事演出し先生を騙し通していた。しかし、8人目にして「青井」という男を女子と勘違いし飛びきり高い声を出した。もちろん、先生にバレてこっぴどく叱れていた。花形くんはそれでも誰のこともせめたりせず。「青井はややこしいよな。」とだけ、僕にぼやいた。
なぜか、花形くんは僕についてきた。なんでも、僕と話すのが面白いと言っていた。「君の屁理屈は度を超えてるよ、おかしな人だな」と彼は笑った。おかしいのは君の方だと言い返すと「やっぱりおかしな人だな」とケタケタ笑っていた。
僕は彼と違ってあまり人と話すのを好まなかった。特に相談なんてしてくるやつ。自分の中で答えがでているくせに、さらに他人に同意を求めるなんて二度手間じゃないか。もっと効率を重視すべきではと思っても口に出してはいけない。口に出したとたん人はどんどん離れていった。だから、花形くんとの関係も彼が悩みなんてないから成立するものであるんだろうな。
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