赤の花火が消える前に

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* 「迷ったんだ。君なら気づくだろうって」  例え、この時間だけはやり過ごせたとしても、この先必ずぼろが出る。 「あいつの頼みは、安易に君を迎えにいけってだけではないだろう?」  花火がパラパラと落ちていく。  すると、さらに花火がうち上がった。赤の花火で、最後のはずなのに。私は思わずテーブルに手をついて少しだけ腰を浮かせた。  ワイングラスが、カタカタと揺れる。 「あいつからの、願いだったんだ。『俺が死んだ後、あいつがフィナーレを見て泣かないように』って」  青、黄色、紫、白──。  花火は尚も上がり続けた。  そんなの、ずるい…………。  火花で明るい夜空を見上げる。  私の中から、あなたはすべてを消すつもりなの?  ぶわっと再び溢れだした涙は、今度は止まらなかった。 「あなた、知らないでしょう……」  苦しくて切なくて、悔しくて。 「本気の涙がこんなにも、苦しいなんてっ」  涙がこんなにも、しょっぱいなんて。  知らないでしょう? 私がどれほどあなたに、想いを寄せていたかなんて。  全部全部、知らないでしょう?  伝えるべきだった。あの日、彼に全部伝えるべきだった。取り返しがつかなくなってしまう前に。  今死ぬほど、 「あなたに、会いたいっ……」  花火はそれはそれは綺麗で、涙は塩よりしょっぱかった。
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