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私達は所謂幼馴染みってやつで。
私達にはお互い問題があって、でもそのお陰で仲良くなれたのかもしれない。
私達の生活は常に病院だった。私はそれほど深刻な病気ではなくて、成長するにつれ良くなるだろうと言われていた。でも彼は違った。治らないとすら、言われた。でもそれでも彼は諦めなかった。
私達の病室は決して近いわけではなくて、廊下の端と端の、彼は個人部屋で私は大部屋だった。だから私はよく部屋を抜け出した。
彼との思い出のなかで一番印象に残っているのは花火だった。名前は知らない。でも毎年七月末に行われる。私達は毎年一緒にその花火を見た。時には屋上で、時にはベランダで、時には病室の窓から。どこで見たってやっぱり花火は綺麗で、彼と見る花火の時間は他のどんな楽しいときよりも格別だった。
彼はよく私にこんな話をした。
『家族と一度だけ、もっと近くで花火を見たことがあるんだ』
彼の言う花火は、この花火大会で唯一この病院から見えるフィナーレの赤の花火のことだった。私達は毎年ふたりでこの花火を見た。たった一度きり。でもそれが楽しかった。
時が経つにつれて私の病状は医者の言う通り回復して、十四歳になる頃私は退院した。彼は全然よくならなくて、それから私達のバラバラな生活が始まった。私は毎週彼の病室に通った。十五の夏の花火も、一緒に見た。彼はずっと変わらなかった。
でも毎週がいつのまにか月一になって、二ヶ月に一回になった。
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