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医者達が世話しなく病室を駆け回り、点滴を確認したり、注射をしたりしているのも怜はお構いなしだった。
浅くなる呼吸が、その場の全員に、悟らせる。
『次俺が、眠ってしまって目を覚まさなかったら、あの場所に、兄貴が行ってくれ。あいつと約束したんだ』
震える手が、後悔からか、悔しさからか、怖さからか、俺には分からなかった。
『“二十六の夏、必ず迎えに行くから”って……』
瞼が閉じようとするのを、必死で抗って、
『忘れないで……。赤の花火が、消える前、に……』
その言葉を残して、怜は永遠に目を開けることはなかった。
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