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ケラケラと笑うミツキにテンヤは青筋を浮かべる。
「其れは、俺の獲物だ!俺の兎さんだ!」
「違うな。僕の兎だ。テンヤの罠は外れてたんだよ。其処からこの兎を狩ったのは僕だ。」
互いに譲らない2人はゆっくりと武器に手をかける。目は外さずミツキは目を細め口角を上げ、テンヤは仏頂面で口を一文字に縛る。
鳥が空に羽ばたき、ミツキの右手がシミターの柄に、テンヤの左手が腰の大きなナイフに触れた。
風が、止まった。
「!!ったく、バイオンが!!」
ミツキがシミターに伸ばした手の先を足のホルダーにある小型のナイフへ変える。
「兎さんは俺のだからな!!」
テンヤはそのまま左手にナイフを掴むとミツキの方へ駆け、すれ違う。
「くそっ!兎は山分けだ!!」
ミツキは袋を担ぐとテンヤの後を追った。彼らが湖の端に沿って走り始めた時、背後の森からゴオオオという音が響き、一瞬静かになったかと思うと木が数本吹き飛ぶ。
「敵のお出ましだ。ほらお前の好きな兎さんじゃないか。」
「あれは兎さんじゃない。バイオンだ。」
駆ける2人は飛んでくる木を華麗に避けると後方を見やる。
「見た目は大きな兎だがな。」
ミツキが見た先、後方の森の出口に大きな毛の塊が存在した。塊はモゴモゴと動くと突如として伸び上がり長い耳が立ち上がり、赤く光る2つの目が開いた。
「やばい、敵さん、目が開いてる。第二段階に入ってるぞ。」
「核は見えるか?ミツキ。」
「やってるよ。僕のゴーグルに感謝して兎は山分けな。」
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