白帽子の魔女

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瞑想からさめた歩夢は、表情からしても全くの別人だった。 「簡単な隠語…さかさまことば…森を隠すなら木の中…図書室を隠すなら本の中…」 「そうか。ヒントを得るために飛び込んだ“図書室(ここ)”が思わぬ答えだってことか」 真の言葉に、照と静流は驚いて歩夢をみつめる。 「普通の生徒は見向きもせず、触れることさえ考えもおよばない本…人間の死角に置かれた本…それが答え」 そう言って歩夢は図書室の一角に視線をさだめる。 そして、その本まで迷いなく歩を進める。 図書室の奥まった棚。 次の瞬間には、歩夢は、黒色の装丁の本を手にしていた。 歩夢は、その表紙を開く。 すると、歩夢の身が一瞬にして消え失せた。 あわてて真が、床にどさりと落ちた本を拾いあげて開いているページを覗き込むと、その身もその場から消え失せた。 静流は冷静に状況を判断し、床に落ちた本には手を触れないで、開かれているページを覗き込んだ。 そこには、テレビの画面のように、本棚が並ぶ空間に立つ歩夢と真の元気な姿が写っていた。 静流は安堵して歩夢たちに話しかける。 歩夢たちからは音声は届かなかったが、ページ下に字幕のようにその台詞が浮かんだ。 どうやらビンゴだな、と真は言った。 「本に閉じ込められないうちに出てこい」 それまで無言をきめこんでいた照が言う。 その言葉に従って、歩夢たちは本を脱する。 「照、どういうことだよ?」 真が問う。 「そのままだ。秘密の図書室に入る時は、外に必ず一人味方をつけていなくてはだめだ。おそらく、誰かに本を閉じられてしまったら、出てこられなくなる。本を焼かれたりでもしたらどうなるか、考えるだけでも恐ろしい。魔法っていうのは、そういう残酷な面を持っているということはいつも念頭に置いておかなければならない。お前らは、甘すぎる」 「そうだな」 静流はそう言って納得したようだったが、真は不愉快そうに顔を歪めた。 歩夢に至っては状況を理解していないようだった。 こうして四人の魔法と向き合う日々が始まった。
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