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「よう、皆!今日も元気ですかー?」
秘密の図書室を見付けた翌日、そう言って敬礼しながら照が教室に入ってくる。
歩夢は何が起こったか理解できずに唖然として照を見た後、真と静流を見たが、二人は冷静に読書を続けていた。
暫くした後、目を白黒させていた歩夢に向かって真が仕方なさげに説明を加えた。
「照は所謂多重人格なんだよ。静流先輩は流石っすね。まるで最初から知っていたみたいにしてますが、初耳ですよね?」
「そういうお前は何で知っているんだ?」
静流が冷静にツッコミを入れる。
「そりゃあ、腐れ縁だからっすよ」
そう言って真は渋い顔をして照をみやる。
歩夢もそれは初耳だった。
「腐れ縁?あんたの口からそんな事きいた事ないし、あんたが照君といるとこ見かけたことないけど」
思ったまま歩夢がそう言うと、真は、男同士の事だから知らなくても不思議はない、とだけ言って読書に戻った。
「歩夢ちゃん、特別に俺の得意な魔法教えてあげるよ。さあ、よく見えるように僕の前に立って」
歩夢は言われるままに照の前に立つ。
それを満足げにみやって、照が言葉を続ける。
「風の魔法だ、行くよ、歩夢ちゃん。フェリル!」
照がそう言って両腕を広げるようにすると、辺りに風が起こり、それは歩夢を包みこんで、そのスカートを派手に捲りあがらせた。
歩夢は一瞬言葉を失ったが、次の瞬間には悲鳴と共に照に張り手をくらわせていた。
「ぶったね、親父にも殴られたことないのにー、ってか?」
そう言って照は戯けて見せる。
この確信犯が、と思いながら、歩夢は顔をひきつらせて真と静流の方を見やる。
二人ともすぐに視線をそらしたが、明らかに“それ”を見たと分かる。
「うさぎ柄、か。ガキだな」
真がそうつぶやいて向こう側を見て、くくく、と笑う。
歩夢は顔を赤らめて、真にも張り手を加えようとするが、ひらりと躱され、そのまま逃げられてしまった。
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