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ここは、私立神矢高校。
校内東部に構えられた、体育館と呼ぶには豪奢すぎる建造物のなかで、第166期生の入学式がとりおこなわれていた。
神矢高校は、帝都の西部に位置する、金持ちの子息が多数通う、いわゆるエリート校だ。
西野歩夢と南波麗子は、本年度から始まった、特級特待生制度により入学を許された、異分子だ。
特級特待生制度は、家柄によらず成績の良い者を選抜するもので、伝統の中にあっても革新を忘れない、そういう意図で立案、施行されたらしい。
簡単に言えば、新しい風を入れようというもので、金持ちの道楽的なものと考えればよいだろう。
歩夢は、自分の運のよさに嬉嬉とするばかりで、先のことは全く考えていなかった。
その分自分がしっかりしなくては、と麗子は考えているようだった。
「それはそうと」
麗子がまた小声で話しだす。
「この学校の入学式には女子だけに特別な儀式があるそうなのよ」
「ふうん」
「ちょっと、真面目に聞きなさいよ」
「うん?」
「まあ、いいわ。実際これから経験するんだから、それからいろいろ説明するわ。やっぱり歩夢には誰も教えてくれなかったのね。先が思いやられるわ」
麗子はそう言って押し黙る。
そして、入学式は、残すところ閉会の言葉だけとなった。
しかしそこで司会の教師が、聖なる乙女たるための儀を始めます、と言って、他の教員達も加えて何やら準備をしだした。
壇上に椅子が用意され、校長が、古めかしい茶色の三角帽を持ってその隣りに立つ。
魔女がかぶる、あの帽子だ。
「相沢夏希」
歩夢が頭の中で疑問符を大量発生させている中、司会の教師が緊迫した声で女子生徒を呼ばい、呼ばれた女子生徒は、はい、と大きく返事をして壇上にのぼっていく。
座っていた席から察するにに、歩夢達と同じ、一年一組の出席番号一番の生徒のようだった。
そして女子生徒は、壇上の椅子に深く腰掛け、その瞬間を待つ。
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