0人が本棚に入れています
本棚に追加
「いいかげんな人ねえ」
歩夢があきれて言う。
「そうじゃない。疲れて眠ったんだ」
真がつっけんどんにいう。
「それがふざけているって言ってるの!」
歩夢はそう言って眉間にしわをよせてほほをふくらませる。
「今まで話していたのは、石川先生自身じゃない。誰かが先生を操ってしゃべらせていたんだ。それで疲弊して眠りに落ちた」
静流がそう説明を加えた。
「え?そうなの?」
「お前、それでも本当に魔女なのか?」
真がそう言って、信じられないという顔をする。
「魔女、魔女って。私はそんなんじゃない。普通の女の子よ」
そう言って涙ぐむ歩夢を見て、わずかに悪いことをしたという顔をした真だったが、自分の立ち位置を知らぬまま、自己を認めぬままでは、余計に歩夢が困るだけだ、と思い直して押し黙った。
「まず、石川先生を操っていた人物を探そう。あからさまに存在をアピールしていたから、探し出すのはそんなに難しいことじゃない」
そう言って静流は石川先生の頭部に手を触れながら眼を閉じ、何かを探りはじめる。
そして、しばらくそうしたあと、歩夢らの方を見て言った。
「念の糸は切れてしまっているが、残留している念と似たような気を北校舎一階あたりから感じる。行ってみよう」
最初のコメントを投稿しよう!