第3章  呼び込まれた再会

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そしておずおずとリボンを解き、箱を開ける。 中には、ミルクチョコレートが二つ。 それを目にすると同時に、あのワンコくんの声が耳に戻ってきた。 今度は、僕が助ける番です。 あれは、どんな意味だったんだろう――。 しかし、あまり上手く回らない思考の中では、答えは見つかりそうもない。 そして、震える指先でチョコレートを一つ摘まんだ私は、 そっと口にそれを含んだ。 優しい甘さが口の中に広がり、ほんのりと刺激を帯びた香りが鼻孔を抜ける。 ふぅ……。 ゆっくりと、息をついたつもりだった。 しかし零れ出た吐息が誘ったのは、私の頬を流れ落ちる涙だった。
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