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夏休みも半分を過ぎようとする頃。
蝉の鳴き声と共に、
太陽が地面を焦がす音が聞こえてきそうな暑い日だった。
「本当に来ないの? 後から父さんと来てもいいのよ?」
母は玄関先で、
靴を履きながら何度も繰り返した質問をもう一度だけ聞いた。
「きっと喜ぶと思うわよ、
あなたの顔見たら」
これから実家へ向かう母を見送りに出て来た爽汰は、
睨むようにして息子の返事を待つ母の目を見られずに答えた。
「……よろしく伝えて。
また今度遊びに行くからって」
母は、
はあと大きくため息をついてから、
諦めたように荷物を手に持って玄関のドアを開け出て行った。
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