『つかれた……。もういやだ……』

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「出ろよ。気になって、眠れないだろ」 最初は気にかけていた俺だったが、そのうち、加藤のイタズラ好きの、はた迷惑な性格が思い出された。 酔って、真夜中にふざけた電話をかけてきたことは以前にもあった。 そこで、俺はようやく気がついた。 「あっ! これって、新手のイタズラか? 加藤らしいっちゃ、加藤らしいけど。くそっ。何かあったのかと、ゾッとしたぞ。明日、会社で覚えてろよ……って、もう今日じゃねえか!」 俺はこれを加藤のイタズラ電話と断定し、怒りながら布団にもぐった。 しかし、それはイタズラじゃなかった。 その日、加藤は会社に来なかった。 ふざけているように見えても、奴は今まで一度も無断欠勤なんてしたことはなかった。 何度電話をしても出ず、近くに住む加藤の母にも電話して、連絡してもらうようにした。 しかし、いっこうに音沙汰なく、お昼になり、上司から指名され、一番仲の良かった俺が加藤の家に行くことになった。 「まったくよぉ。手まぁかけさせんなよな」 愚痴りつつも、加藤の『つかれた……。もういやだ……』という一言が、俺のどこかでひっかかってはいた。
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